『できる限り壊さない改装計画』
「どこに相談したらいいのか分からない」 多くの人が「家」と向き合うときに思っていることだろうと思います。
この計画は、ペリカンビルの中にあるドアを見た方からこんな風にしたいけどできるの?という相談から始まりました。
親の建てた住まいを引き継ぐことになった同世代。
だから、建物もペリカンビルと同じく30才。
子供も同級生だったので悩むポイントも似ています。
子供が大きくなって、生活空間が狭くなったから使っていない3階に子供部屋を作ろう。
我が家も同じ問題を抱えています。
さてどうしたものか。答えは一つじゃないのです。
今回の計画、そのまま3階に子供部屋をつくるのではなくて、子供たちのことを一緒に考えることから始めました。
今回の改装の目的が、
子供たちに自立を促すためであり、
子供達と過ごす限られた時間を目一杯楽しむためであり、
毎日の生活を楽しく快適にするため。
一緒に考えていると自然と答えが見えてきます。
結局、3階の工事よりも現在住んでいる居住空間をもっと自分たちらしくしようとなりました。
だって、子供はあっという間に小学生。
子供たちと過ごす時間は何物にも代えられないと僕は思うからです。
仕事基準は「自分ならこうしたい」。
ランドセルや教科書をしまう収納を使いやすくしよう。
リビングと寝室の間に「巣立ち部屋」と名付けた部屋を計画しました。
「巣立ち部屋」は仕切られているけど繋がっている中間領域。
初めて両親から離れて寝ても寂しくないだろう空気感を大切にすること。
この部屋が役目を終える頃に3階に子供室を作るほうがきっと楽しい時間が長く取れると考えました。
そして「巣立ち部屋」を将来は趣味の部屋にしていこう。
こんな計画を、時間をかけて一緒に練りました。
ストーリーは家族の分だけあります。 僕にはわからない部分も多いので、ご家族で答えをだしてもらいます。
やってみたいアイデアも良いところ、悪いところも全部オープンにして、自分だったこうしたい基準のアドバイスを織り込みながら全体をコーディネートしていきます。
今回はこのような「住まい」の道をデザインしました。
こういったアプローチで考えていくとデザインに住むのではなくて、住まいをデザインすることができると思います。
タイトルの『できる限り壊さない改装計画』は私たちからの一方的な贈り物です。
両親が作った家をできる限り残すことで、「ありがとう、さようなら」が「これからもよろしくね」に変わるって素晴らしい。
ゴミも減るし、解体費用も少なくなる。心がすーっと楽になるだろうなと思ったからです。
子供たちのためにたくさん考えたことは、子供たちにしっかりと伝わっていると思います。
(改装前 before)
- もともとの素材やインテリアを活かす計画を練りました。
- 現状でもよい雰囲気だったため、食堂とリビングは既存の床の上に新しい床材を重ねるだけにしました。
- 和室の角にある柱を取りたいとの要望でした。できる限り天井も壊さない検討を進めました。
- 濃い色の壁紙で部屋が暗く、広さも中途半端だったため広くすることにしました。
- 新しくつくる扉の塗装にああせて黒に塗装することを提案しました。まだまだ使えるものは工夫次第でよくなります。
- 子供たちの荷物も増えて、この和室を有効活用する方向で検討しました。
- 和室と左手の子供たちのスペースが今回の提案の一番のメインの場所になりました。
- フロアの中心にある和室は周囲から収納を計画し手前の食堂と「巣立ち部屋」をつなぐピアノ室へと変更しました。
- 階段が玄関につながっているため扉をつけることで寒さ対策が可能であると考えました。
- 寒さ対策に加えて、プライベートとオフィシャルを切り替える境界として考えました。
- ドアも再利用できるものは塗装を選択しています。外に出てしまっている掃除機の収納も新しく作ることになりました。
- 和室の奥に子供たちが荷物を置く空間がありました。
(改装後 after)
- リビングは床を張り照明器具を交換しただけですが、もとの素材がよかったこともあり全体をうまくなじませることができました。
- 床と照明器具の変更のみで全く違う印象に変わります。(できる限り壊さない改装計画)
- 和室の柱と壁がなくなりキッチンからは「巣立ち部屋」が見えるようにしました。天井がつながると広さを感じます。
- 家族空間とほどよくつながる巣立ち部屋は建具を開閉して風も通すことができます。
- 床を張り、扉を塗装することで新品のようになりました。(できる限り壊さない改装計画)
- 和室の柱がなくなり、食堂とリビングとピアノ室が一つの空間になりました。
- 和室のあった場所はピアノ室と収納になりました。子供たちの遊び場です。
- 3人娘のためのランドセル収納は教科書などもたくさん収納できるように工夫してあります。
- 玄関に熱を奪われないための扉を新設しました。
- 1階の事務所と2階の住宅の境界です。気持ちを切り替えるためでもある大切な扉です。
- この扉も別のところにあったものをカットした上で塗装して再利用しています。
- 「巣立ち部屋」とつながったピアノ室です。ヘリンボーンの床がとてもきれいです。
- ナラの無垢板を使ったヘリンボーンの床と壁の白、ピアノと扉の黒の3色でコーディネートしています。
- 使い勝手を何度も打ち合わせた収納を子供たちが早速使っている様子
- 寝室とリビングの間にほどよく中が見える「巣立ち部屋」を計画しました(子供たちがさみしくない工夫)
- 寝室は床の上にカーペットを敷き、壁の位置を一部変更しました。(作り直した壁に間接照明を計画)
- 巣立ち部屋は将来目隠しするためのロールスクリーンボックスを計画しています。